さて、地球には象とか鯨とかの巨大生物からアリとかフンコロガシのような小さな生物まで大小さまざまな生き物がいるわけで、それと同じように大宇宙にも巨大な宇宙人から小さな宇宙人まで色々なサイズの宇宙人がいて当然という話になるのだが。
まあ小さな宇宙人といえば、地球人が一番驚くのはケンタ星人だろう。 彼らの大きさは1ミリほどだが、驚くべきことはその姿が地球のニワトリにそっくりということだ。 しかも外観からも分かるように非常に小さな脳ミソだが、彼らケンタ星人は地球の最高高等生物を自認する人間を遥かに凌ぐ科学力を持ち大宇宙を飛び回っているのも動かし難い事実になる。 ただ、余りにも小さなケンタ星人。 他の宇宙人には彼らの大宇宙航行用の巨大宇宙船すらデブリ程度にしか認識されず、何かとプライドを傷つけられているのも確かだった。 それ故のコンプレックスなのだろうか、多少偏屈で短気なのもケンタ星人の大きな特徴の一つになるだろう。
そんなケンタ星人が彼らにそっくりな姿をした巨大生物が地球に生息しているという噂を耳にしたのだろう、その巨大生物の調査を決めたようだ。 彼らは地球を裏庭として管轄している月の王宮に外交院を通じて正式に地球調査の許可を求めてきた。 月の王宮としても偏屈短気なケンタ星人と揉めるのは面倒と地球着陸を許可することにした。
「ねえ恵美子、外交院がケンタ星人の監視と引き換えに生活費の増額を持ちかけてきたけど、どう思う?」
「ケンタ星人?」
「メッチャ小さくて虫眼鏡がないと見えない鳥型宇宙人」
「あっ、思い出した。 あいつら地球のニワトリにそっくりで、確かメッチャ気が短かったとか」
「そう、そのケンタ星人が地球のニワトリの調査に来るんだって。 それで外交院が私達に仕事を持ち込んで来たのよ」
「で、どのくらい増やすって?」
「とりあえず20万ウサギで状況次第では増額もありとか、そんな話よ」
「ラッキー! 貰えるもんは貰っとかないと」
「じゃ、貰っとくね」
何時でも不穏な風が吹いている大宇宙、それをラッキーと考える恵美子と幸恵。 そしてそんな彼女らに何かを期待するのか月の外交院。 しかしまあ常識外のケンタ星人の監視を非常識なかぐや姫恵美子に頼むとは、外交院としては珍しく常識的な判断なのか・・・或いは、ただ単に面倒事を嫌った外交院が厄介事を恵美子に押し付けただけとも思えるのだが。
「おいサトシ、どうせ暇なんだろう、バイトしないか?」
「えっ、バイトですか、恵美子さん?」
「嫌か?」
「いや、そんなことは言ってませんよ」
「じゃ、決まりだな」
外交院からの仕事は引き受けるが自分達では動かない恵美子と幸恵。 何時もの居酒屋で暇そうな人間を物色、不幸にもそこに居合わせたサトシが恵美子のご指名を受けた。
「サトシ、仕事はケンタ星人の監視になる」
「けんたせいじん・・・、何ですかそれ?」
「メッチャ小さいニワトリみたいな宇宙人だ。 そいつらが裏庭のニワトリの調査に来るとかで、そいつらの監視だ」
「それってもしかしてメン・イン・ザ・ブラックみたいな話なんですか、幸恵さん?」
「まあ、そんなもんかもね」
それにしても虫眼鏡を使わないと見えないような宇宙人を、それも裏庭とはいってもそれなりに広い地球で監視しようとは現実無視の机上の空論話とも思えるが、しかしまあ不用品不良品置き場のような裏庭の話になると誰もがいい加減になるのは大宇宙でも非常識とはいえないのが世の常なのか。