「えぇ〜と、次はですねぇ、今日のラストの議題になります。 それから午後の ”最新の都市型リゾートを学ぶ” という研修ですが、その具体的な内容はこの都市型高級リゾートホテル自慢の最高級スパを楽しんで、都市型リゾートへの理解を深めるということになります。 なおランチは有名シェフのイタリアンでして、午後からの最高級スパと合わせて日頃の仕事の疲れを癒せるのではと。 ではランチの時間も迫っておりますので、先ずは資料の簡単な説明から・・・」
ここは独立行政法人市民リゾート供給機構の市民ホテル管理組合が管理する都市型高級リゾートホテルの最高級スイート会議室。 その会議室の超高級ソファーに座り会議らしきことをしているのは同じ市民リゾート供給機構の市民動物園管理組合の課長達だった。
「テッラのサファリパークで異常進化したネズミの問題なのですが、詳しいことは資料に目を通してもらうとして、その異常進化したネズミはこのまま放置しても自滅すると考えられてますが、その際にサファリパークの環境に少なからずの悪影響が出るだろうと・・・」
市民動物園管理組合が生物の進化に特化したサファリパークとして運営している辺境惑星のテッラ。 そのサファリパークの二足歩行のネズミに問題が発生し、惑星テッラの環境を激変させてしまう可能性をサファリパークを利用している研究者達が指摘していた。
「資料によりますと、ソフトに問題があるとか?」
「詳しくは分かりませんが外注したソフト、二足歩行ネズミの進化プログラムに問題があるようで、まあバグのようなものとか・・・」
「もしかしてそれは、例の噂に関係する・・・」
「まあ端的に言ってしまえば、ソフトの外注先が今回勇退する理事長の関係企業でして、この際すべてを一括処理してしまおうと、理事会の方で話が内々に進んでいます」
「そういう事でしたら、私たちが口を挟む問題ではないのでは」
市民リゾート供給機構と民間企業との不正な取引が週刊誌を賑わせ、現理事長との関わりが色々な形で世間の噂になっていた。 そして現理事長の勇退ということで問題を処理しようと考えた理事会は当然のように現理事長の関係企業とも関係を切ろうとしていた。
「実はそれに絡んで、キャラクターグッズの問題がありまして」
「あっ、もしかしてあのネズミのキャラクターも」
「それは残念だなぁ・・・、あの頭の大きなネズミはどこか愛嬌があって、私は嫌いじゃないんだが」
「私の甥っ子も好きなようで、グッズをだいぶ集めてますよ」
「ただグッズのデザイン、製造販売が現理事長の関係企業なので・・・」
「なるほど、そういう事でしたか」
「ですので、サファリパークのネズミ型を整理しまして新たにペンギン型をメインとし、それに合わせて新たにペンギン型のキャラクターグッズをデザインし、商品化しようという話になってます。 その外注先としては供給機構のある理事の方から、まあ次期理事長候補の方といえば分かると思いますが、その方から内々に非常に優秀な会社を知っているという話がありまして・・・」
「なるほどそれならば、私たちが新たに会社を探す手間も省けるし、それで問題はないかと」
「ええ、私も同感です」
「もうひとつ付け加えておきますと、その方の口添えで今回の研修会がこのリゾートホテルで開かれたことを、一応お知らせしておきます」
「そうなんですか、新理事長には色々と期待ができそうですね」
「確かに、現理事長はなかなか渋い方でしたからねぇ」
「もしかしたら今年の忘年会は、あの話題の超高級リゾートホテルが会場になるかも知れませんね」
「新理事長には大いに期待しましょう」
「では、そろそろランチの時間になりますので、会議はこれまでとします。 お疲れ様でした」
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ということで、辺境惑星テッラのネズミ形はキャラクターグッズと一緒に廃棄処分され、新たにペンギン型がサファリパークのメインキャラクターとなり新グッズも販売されるようです。