レッドカード ペンギン Part 2

 空からレッドカードが降ってきた。 名刺ほどの大きさで、赤い紙のようなものが突然大量に降ってきた。 それもおそらくは何兆、何百兆枚ものレッドカードが世界中のありとあらゆる場所に。 ニューヨークはもちろんナイジェリアはラゴスそしてブラジルのアマゾン奥地にも、シベリアは地の果てツンドラからエベレストの頂を目指す登山隊バースキャンプ、南極大陸そして北極海から大西洋、太平洋の海原に漂う小さなヨットにまで世界のいたる所に降ってきた。

 ただの赤い紙のようにも見えたレッドカードだが、それは地球に存在しない物質だった。 折れない切れない燃えない溶けない形が変わらない、世界の最新産廃処理技術がまったく通用しない。 世界中の科学者、宗教家はもちろん政治家に経済界も、これだけ大量のゴミとなれば環境NGOをも巻き込んでの大騒動となった。

 おそらくは神様ではなく何処ぞの迷惑な宇宙人が地球にばら撒いたとの結論に達したが、そもそも宇宙人の存在すら確認できていない人間が空から降ってきたレッドカードの意味や目的を解明することなど到底不可能だった。 そしてそれが例え宇宙人の存在を証明する貴重な証拠だったとしても、あまりにも大量のレッドカードは処分すべきゴミとして扱われた。

 だが偶然は重なるもの・・・偶然にもホットドッグスタンド横にゴミとして掃き寄せられたレッドカードの山、偶然にもその横で新しいケチャップの巨大缶を開けようとしたバイト、偶然にも手が滑り巨大なケチャップ缶がひっくり返った、偶然にもひっくり返ったケチャップの巨大缶がレッドカードの山に逆さまに着地し、そう偶然にもレッドカードの山に大量のケチャップが注がれた。

 これにはレッドカードの山が驚いた。 驚いて声を上げたというか、このレッドカードはケチャップが掛かると喋り出すという超絶スーパーな仕掛けのフライヤーだった。 ともかく偶然は恐ろし、そして時には起こり得る超偶然!

 「銀河標準時間、”8605/228107-420139″ に人間が地球化から消えることに決まりました。 独立行政法人市民リゾート供給機構からの通知です」

 「銀河標準時間、”8605/228107-420139″ に人間が地球から消えることに決まりました。 独立行政法人市民リゾート供給機構からの通知です」

 「銀河標準時間、”8605/229107-420139″ に人間が地球から消えることに決まりました。 独立行政法人市民リゾート供給機構からの通知です」

 「銀河標準時間、”8605/228107-420139″ に人間が地球から消えることが決まりました。 独立行政法人市民リゾート供給機構からの通知です」

 大量のレッドカードに大量のケチャップ、一度に大量のレッドカードが叫び出した。 これにはホットドッグスタンドのバイトが驚いた。 もちろん近くの歩道にいた通行人も驚いた。 当然町中が大騒ぎ。 そして世界中でレッドカードにケチャップが掛けられて、世界中がひっくり返った。

 世界中がひっくり返ったが、銀河標準時間 “8605/228107-420139” が理解できない。 むろんレッドカードを撒いたと思われる “独立行政法人市民リゾート供給機構” もなんのことやら。 それでも何処かの親切な宇宙人が警告のために地球に撒いたのだろうと火事場の馬鹿力。 世界中が戦争などやっている時ではないと、国家の最高暗号解読術、軍需産業の最高機密、大企業のありとあらゆる特許技術に世界のスーパーコンピューターが無償提供されどうにか銀河標準時間だけは解明されたが・・・

 

 

  

 

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