・・・そして、地球防衛隊爆誕!

 「恵美子さん、ケンタ星人が大変です!」

 「サトシ、ケンタがどうしたって?」

 「左巻さんの話ではケンタ星人が事故ったらしいです」

 エリア51の花形部署となっているUFO追跡課が小さな小さなUFOが渋谷で事故ったことを確認し、船体の残骸回収のために特別エージェントを日本に派遣したという話を左巻が探り出したとか。 と同時にケンタ星人の無線を傍受していた月の外交院からはかぐや姫の恵美子に、ケンタ星人の宇宙船が東京渋谷で行方不明になったとかで調査依頼が来ていた。

 「どうやらマジに渋谷で事故ったか・・・、なんか面白くなりそうなんだけど、幸恵」

 「どうもそんな感じね。 恵美子、外交院に調査経費の水増し請求しようよ」

 「サトシ、左巻を呼び出せ」

 「あっ、はい、でも左巻さんは、今日は仕事だと思いますが・・・」

 「いいから私が呼んでると伝えろ」

 「はっ、はい、恵美子さん」

 月の王宮にしても自分の裏庭で勝手に事故られ、これで裏庭の管理責任者だとして損害賠償でも請求されてはたまったものではない。 とにかく相手は小さいことには異常なコンプレックスを持ちしかも滅茶苦茶に気の短いケンタ星人、何を言い出すか分からない。 しかもこんな非常事態にも頼れるのは素行不良で島流しにした姫君、かぐや姫のヤンキー恵美子しかいないとはーーー大宇宙で地球を自分の裏庭と自負し地球の安全を担保しているはずの月の王宮ではあるが、何とも言い難い話である。

 「恵美子、久しぶりじゃねえか」

 さすがは銀次郎、直感的にお祭り騒ぎの匂いを嗅ぎつけ左巻と一緒に居酒屋に入って来た。

 「銀次か、なんか用か?」

 「冷てえなぁ〜、なんか用かはねえだろう。 左巻からニワトリ星人の話は聞いてるぜ」

 「ケンタの事故の話か、別に大した話じゃないと思うけど」

 「いや、俺が思うに、ちょっとしたお祭りになりそうな気がするんだがなぁ〜、幸恵はどう思う?」

 「・・・さあねぇ」

 「必要なものがあるなら月光堂を呼ぶぜ、アイツは知ってのとおり何でも器用に作る。 それから事務所が必要なら、俺の口添えでカルカッタを自由に使えるようになるぜ。 どうだ、俺にも一枚噛ませろ」

 これは恵美子にしても悪い話ではない。 銀次郎にはカルカッタでタダ酒を飲ませておけば、あとは豆太郎に白紙の領収書を出させカルカッタには入り浸り放題。 そして月の外交院にはカルカッタからの領収書で経費の水増し請求し放題という、なんとも美味しい話だ。 恵美子と幸恵はお互いに目配せをし・・・

 「カルカッタでのタダ酒ということでどうだ、銀次郎?」

 「さすがはかぐや姫の恵美子だ、話が早いねぇ」

 さて、話が決まったところでサトシが・・・

 「あのぅ〜、左巻さん、モミジさんは元気ですか?」

 それにしても話が奇妙な方向にーーーかぐや姫のヤンキー恵美子に悪友侍女の幸恵、北海道の鹿しか知らない恋するサトシとオタクのハッカー左巻にその妹メンヘラモミジ、下町の大工銀次郎と和菓子屋月光堂そして病み酒場カルカッタの置物豆太郎、果たして彼らでニワトリ調査隊のリベンジに燃える小さな小さな地球のニワトリにそっくりでメチャクチャ短気なケンタ星人に対抗できるのか? というか、どうやらこの八人に地球の運命が託されたようだが・・・

 まあ恵美子や幸恵そして銀次郎が勝手にお祭り騒ぎを始めるのは構わないとしても、それに巻き込まれるまったく関係のない月光堂にサトシと左巻にモミジそして豆太郎にとっては突然に降りかかった大災難としか言いようがないのは確かだ。

 

 

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