「なあクソ餓鬼よ、最近どうも仕事が面倒で」
「なんだ、また愚痴かよサンタ」
「アンタぐらいしか俺の愚痴を聞いてくれるのがいないんでな」
「お前、仕事のわりに友達が少ねえからな」
一年に一週間ほどしか働かず後はトナカイ達と怠惰な生活を送っている俺が仕事の不満を口にするのもなんだが、気心の知れた数少ない友達ともいえるクソ餓鬼が尋ねて来たので、つい愚痴がこぼしてしまう。
「まあなぁ、でも性格の悪いアンタに言われるのも・・・」
「こんな山奥にトナカイと一緒に引きこもってりゃ、そんなもんかもな」
サンタクロースの仕事も最近では昔のように手放しで喜んでもらえなくなった。 昔ながらにトナカイのソリで煙突からプレゼントを届けに行くのだが以前では考えられなかったトラブルが起こる。
先ずはパーキングの問題だ。 プレゼントを部屋まで届けるのに煙突にトナカイを繋いでいると、それは危険だから止めてくれと警察から苦情が入る。 それではとトナカイを地上に下ろすと、今度は駐車違反のキップを切ろうとする。 何の恨みがあっての嫌がらせかと聞くと、奴らはコインパーキングがあるからそこに停めろと言い、ついでに飲酒検査までしてくる・・・実はコインパーキングの業者とマジにグルではないかと疑ってしまう。 果てには移動オービスを空に向けることさえもある。 まあ俺も自衛手段としてオービス探知機をソリに付けてはいるが、ともかく相手は国家権力、逆らわないようにしているのだが・・・
そしてプレゼントを届けに部屋に入ったら入ったで、来るのが遅いとか煙突の煤が部屋に飛び散って汚れたとか苦情を言われたりもする。 私に言わせれば、サンタクロースが煙突から入って来るのを知っているのだから煙突の掃除ぐらいはしておけという話だ。 しかしもし私がそんなことでも言おうものなら逆ギレされ、不法侵入で警察に訴えるなどと騒がれる。 当然のように持って行ったプレゼントが気に入らないから交換しろとか、物より現金が良いとか言われ放題だ。 そして届けたプレゼントが次の日にはメルカリに出品されていても驚かなくなった。 何とも世知辛い世の中だ。
「なあクソ餓鬼、酷い話だと思わないか」
「昔から世の中はこんなもんだぜ、サンタ」
「昔はこんなんじゃなかったんだがなぁ・・・、これも時代の流れっていうやつか」
「なあサンタ、愚痴っててもしょうがねえだろうが、いっそアマゾンでも使ったらどうだ」
「アマゾンかぁ・・・、あれは確かに便利だ。 こんな山奥でも送料無料で送ってくれるんで俺も随分と助かってるよ」
「テメエで冬の寒空を届けに行かなくても、暖炉の前でスマホをクリックするだけで仕事は終わっちまうわ、スピード違反、駐車違反のキップの心配はないし、だいたい詰まった煙突で顔まで煤まみれになることもないぜ。 しかもクレーマーに直接わめかれることはないし、もし苦情のメールが来たら受信拒否にしとけば済むこった。 なあ、アマゾン使うだけでもう愚痴ることもなくなるぜ。 クリスマスだ、さあ飲もうぜサンタクロース」
「これも時代ってやつかなぁ・・・、メリークリスマス」