空を飛ぶ人 Part 2

 彼は飛び続けた。 青い空と碧い海、そしてほんの少しの雲しか見えない世界を、彼は飛び続けた。 彼には目的地も、理由もなかった。 彼は飛んでいることが楽しく、そして幸せだった。

 人々は飛んでいる彼を見つけると、叫んだ。

 「鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!」

 そして何故か、人々は彼に信じられないほど多くのことを期待した。

 彼は期待に応えようと、可能な限りの努力をし人々の期待に応えてきた。 だが人々は何時も、彼にそれ以上のことを期待した。 確かに彼には特別な力、人々の直面する多くの問題を解決する特別な能力を持っていた。

 だがある日彼は思ったーーー飛ぶこと以外のことを止めようと。 それは人々の期待を裏切ること以外の何ものでもないことを、彼も十分に分かっていた。 

 彼が一つの問題を解決すると、それによって十の問題が起きた。 その十の問題を解決すると、それによって百の問題が起きた。 何かが根本的に間違っていると、彼は感じた。 そして、それは彼が関わってはいけない問題だとも感じていた。 その問題は人々が、彼ら自身で解決しなければならない問題であり、人々にはその問題を解決する能力があると思った。 同時に、彼が人々の問題を解決することに飽きたのも、確かだった。

 しかし人々は彼に期待し、彼が問題を解決してくれることを祈るだけだった。

 そして何時しか人々は、彼の飛んでいる姿を見つけると、叫んだ。

 「鳥だ! 飛行機だ! いや、ヤツは糞だ! 裏切り者だ!」

 

 

 

 

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA