最高のロケット乗りは誰かって・・・、もしお前さんが出会ったロケット乗りに同じことを聞いたら間違いなく全員が、”ダリア” だと答えるだろうよ。 俺が少しだけ知っているダリアのことを話そうか、聞くかい?
俺がまだ若かった頃、幸運にも仕事の手配所となっていた酒場で彼女と同じ時間を過ごすことができた。 当時の俺はまだこの仕事を始めたばかりで、報酬は安いが安全な仕事を選んで受けていたが、彼女はロケット乗りの間ではすでに知られた名前だった。 俺なんか、彼女と話すこともできなかったさ。
彼女は真っ赤な血の色に塗られた小さなロケットで、躊躇なく漆黒の闇に飛び込んで行った。 例えその仕事が、普段は酒場で命知らず自慢をしているロケット乗りが思わず視線を下に向けてしまうような仕事でも、彼女は視線を真っ直ぐに向け手を上げていた。 だがその視線は、何処か遠くに向けられているようだったがな。
そうさ、伝説どおり彼女はとても美しかった。 そして何時も独りだった。
沢山の男達が彼女に近づこうとしたが、何時も彼女は彼らの目を真っ直ぐに見つめ問いかけていた。
「私と同じように飛べる?」
誰もがその問いに、目を逸らしてしまったさ。
彼女は自分のことを話すことはなかった。 そして誰も彼女の名前、”ダリア” 以外のことは何も知らなかった。
ある日、ブローカーが酒場に仕事を持ってきたが、誰もがそれは絶対に無理だと思った。 だが彼女は一人、何時ものように目を逸さなかった。 そして何時ものように仕事を受けたよ。
その場に居合わせたロケット乗りの間で、賭けが成立した。 半数のロケット乗りは彼女が帰って来ると賭け、残りは帰って来ないと賭けたのさ。 こんな事が起きたのは、最初で最後だったがな・・・、そしてこれが彼女の最後の仕事となった。
そうさ、彼女は帰って来なかった。
だが彼女、ダリアは漆黒の闇に同化する直前に、最後のメッセージとして俺たちに詩を送ってきた。 その詩は歌になって、俺たちロケット乗りの哀歌になった。
お前さん、ロケット乗りに興味があるなら一度くらいは聞いたことがあるだろう、”夜にしか飛べない鳥” この歌を・・・、
私は夜にしか飛べない鳥
でも、悲しくなんかないわ
だって私は、飛べるんだもの
そう、夜の空を
私は夜にしか飛べない鳥
でも、それでもいいの
だって私は、全てを見たくない
悲しすぎるから
私は夜にしか飛べない鳥
でも、私はラララララ・・・
だから私は、自由に飛びまわる
そう、夜の空を
そんなに多くの悲しみには、耐えられない
だから私は、夜にしか飛べないの
そう、悲しみと一緒に夜の空を飛ぶ
そう、世界は余りに悲しすぎるから