「あれ、新人さん?」
「はい、今日からバイトで入ったカサゴといいます。 よろしくお願いします」
「俺、スズキっていうんだ」
「スズキさんですか、ご指導よろしくお願いします」
「カサゴ君さあ、そんな気を使うことないよ。 気楽に行こうや」
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「ママ、今日はお魚釣りができるんだねぇ」
「そうよ、今日はたくさんお魚釣ろうね」
「ぼく初めてのお魚釣りなんだけど、釣れるかなぁ」
「大丈夫よ、ここにはお魚がたくさんいるのよ」
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「スズキさん、お客さんが来たみたいですね」
「母親と小さい子供か。 最近このパターンが増えたなあ・・・、以前は年寄りとサラリーマンがほとんどだったけど」
「スズキさん、この仕事長いんですか?」
「そろそろ十年近くか、とにかく気楽な仕事なんでね」
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「ママ、ここで海のお魚が釣れるんだね。 釣ったお魚食べたいなぁ」
「ここは釣り堀なの、だからお魚が釣れても池に返してあげないといけないのよ。 帰りにお魚屋さんに寄って行こうか」
「釣れたお魚と同じお魚がいるといいなぁ」
「じゃあ、夕飯んはお魚に決まりね」
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「スズキさん、お客さんに挨拶しなくていいんですか?」
「そういう所もあるけど、ここはそんなに気を使わなくてもいいんだ。 あまり気を使うと事故るよ」
「へぇ〜、そうなんですか」
「あのお母さんなんか、ちょっとヤバそうな気がするけど・・・」
「でも、シカトするのも不味いんじゃないんですか」
「もし挨拶したいのなら、息子の方を進めるよ」
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「わっ! ママ、お魚が釣れた。 これ何ていうお魚?」
「これはカサゴっていうのよ。 なんか美味しそうね、持って帰っちゃおうか」
「ママ、だめだよ! お魚がかわいそうだよ」
「そうねえ、タカちゃんがそういうなら。 帰りにお魚屋さんでカサゴ買おうか」
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「マジに危なかったですよ!」
「そうだろう、人は見かけによらんものさ。 特に女は・・・」
「ほんと、スズキさんの感があたりましたよ。 マジにバイト初日に事故るとこでした」
「前のバイトなんかギャルに釣られて、そのまま干物にされちまったよ」
「えっ、マジですか!」