さて、引越しをしよう!

 ギリシャからオランダに引越すことにした。 まあ理由はいくつかある。 例えば三ヶ月毎に更新しなければならないビザだったり、素晴らしい場所でも長くいると飽きてくることもあるし、ギリシャの夏の暑さが嫌になったとか、一度はアムステルダムに住んでみたいとか色々あるがしかし、まあ俺の持病になるムチャをするのが大好きというのが一番の理由かもしれない。

 もし金が十分にあり、その国に親しい知り合いが居るならばそれほどムチャな話でもないが、金もなく知り合いもいないとなれば話は少し変わってくる。 その街に着いた初日からホテル住いをし金を稼ぐことを考えなければならない。 まあそれもトラベリング・バスカーが旅の途中で気に入った町に居座ってしまうのと余り変わりがないと言えなくもないが。

 まあオランダ、アムステルダムには仕入れだったり、トラベリング・バスカーとしてだったりで二十回ほど訪れている。 まったく知らない土地というよりも慣れ親しんだ街ともいえる。 しかしそれでも引越しとなると今まで快適に暮らしていた帰る場所がなくなるわけで、それなりの精神的プレッシャーが引越しを結構な冒険旅行に変えてくれるのも確かだ。

 俺がオランダに引越すということでアテネ、プラカ旧市街でルームシェアーをしていたオランダ人のピートが彼の友人を紹介してくれた。 幸運だ! ホテルではなく、安アパートなどの住居を早めに確保するにはその土地に知り合いがいることが不可欠だ。

 そしてアムステルダム行きの長距離バスのチケットも手にした。 さあこれで荷物をパッキングすれば久しぶりの冒険旅行に俺は出発できる。

 この引越しを冒険旅行として楽しもうと思っている俺はアムステルダムに着いて直ぐに部屋探しをするつもりはない。 アムステルダム以外のオランダの街を余り知らない俺は、先ずはバスキングをしながら他の街の可能性も見たかった・・・ヨーロッパでは街が変われば雰囲気もずいぶん違う。 そんなこともあり大きな荷物はフットワークが重くするだけなので、荷物は最小限に。

 フルート、これは小さくて軽いという理由でニューヨークで手に入れた、どこでもATM。 生活するためには絶対必要な仕事道具。 

 次には北の国オランダで凍え死にしないための絶対的サバイバル必需品、シュラフ。 このシュラフで冬のドイツで野宿をしたこともあり、最悪の凍死を避けられるのは確認済み。

 そしてカナダの田舎のポーンショップで見つけたポータブルタイプライター。 俺の知的な趣味であるストーリーテイラーの必需品になる。 冒険旅行にタイプライターは無駄に重いような気もするが、その分の重さは何かを減らせば問題ない。

 フルートにシュラフそしてタイプライター、それ以外にはたいして重要なものはない。 実際、今回のギリシャは三年ほどになったが、その時に持ち込んだフルート、シュラフ、タイプライター以外に増えた荷物といえば多少の本と楽譜ぐらいだろう。 そんな生活習慣ということで、荷物のパッキングの問題はすぐに解決する。

 さあ、冒険旅行の準備は整った。 後は長距離バスに乗り込み、バスキングと俺自身のサバイバル能力を信じて遊ぶだけだ。 ムチャをするから楽しくて、ムチャをすれば冒険旅行!

 で、最後はトラベラーの常となる別れの挨拶だが・・・

 「ピート、色々と世話になったな」

 「また縁があったら会おうぜ、トコマ」

 「アディオス、ピート!」

 

 

 

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