ラジオから天気予報が流れている。
予報では、今日は ”晴れ、時々石” ということだ。 最近の天気予報は、とても良く当たるようになったので、最高の鹿拾い日和になるのは間違いないだろう。 石避けの傘はあるけど、用心にヘルメットも持って行こう。
「お〜い、準備はできたか?」
「ちょっと待ってよ、おじさん」
僕が思うに、空の上に住む神様は本当に変わった人だと思う。 何でも月の初めに、幸運を祈って空から石を投げるらしい。 そして地上の鹿に当たれば、幸運が訪れるとか・・・曇った日では、神様でも石が鹿に当たったかどうか分からないらしい。
それにしても空から自分に向かって石が飛んでくるなど、鹿にとっては大迷惑な話だろう。 ”神様、鹿の迷惑顧みず” ということなのか。 しかも神様は、幸運が訪れないと困るらしく、何頭かの鹿に当たるまで投げ続けるという。
さて、神様がいったい誰に幸運を祈るかは知らないけれど、これが自然の摂理らしい。 昔学校で、そう習った覚えがある。 まあ、そのお陰で地上の人間は、月の初めに一ヶ月分の鹿肉が手に入る。
とにかく今日は忙しくなる。 鹿拾いの後には干し肉作りに、燻製作りが待っている。 でも夕食には鹿のミンギ焼きがーーー新鮮な鹿肉のミンギ焼き、これは僕の大好物だ。 今日は天気と神様と不幸な鹿に、たくさんの感謝の日だ。
「おい、クンガ! 出発するぞ」
「今行くよ、おじさん」
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この話を聞かせてくれたのは、ブルガリア人だったかポーランド人だったか。 なにせブルガリア、ソフィアの郊外、小さな飲み屋でブルガリア人、ポーランド人と一緒にウオッカを飲みながらの事だったので、その辺りの記憶が曖昧でして・・・で、彼の村に代々伝わる、秘伝の密造ウオッカの製法も一緒に聞きました。