夏はバカンス、出稼ぎシーズン Prt.2

 長った一日もそろそろ終わる頃、どうにか辿り着いたオーストリア、ウイーン。 勝手知ったるこの街ーーー迷うことなく安宿、安食堂へ一直線。 で、ビール片手に思案の結果が、リベンジ!

 ドイツから列車でデンマークに入れば、まず大丈夫だろう。 そして私にはフルートATMがある。 ドイツの街をバスキングしながら北上すれば、デンマークに着くまでにはポーリッシュエアーに払ったエキストラチャージは取り戻せるだろう。 勿論ヒッチハイクも考えたが、移動に時間が取られ、その分バスキングの時間が大きく制限されチケット代回収には非効率という理由で、却下。

 そうと決まれば、明日早朝に駅裏の安宿を飛び出し、ドイツ、ミュンヘン行きの列車に飛び乗る一択となる。

 地方都市好きの私としては、大都会ミュンヘンは初めてとなる。 でもまあ、初めての街はそれなりに手順は決まっている。 駅に着いたら先ずは、ツーリストインフォメーションで笑顔の挨拶。

 「ハイ、この街の地図を貰える?」

 「これがそうよ。 他には?」

 「ホテルを探しているんだけど、安いホテルを」

 「街から少し離れても大丈夫?」

 「できれば、街中で」

 「分かったわ、ちょっと待ってね」

 なんと言ってもインフォメーションの若い女の子達が、貧乏旅行者に極めて親切丁重、好意的なのが素晴らしい。 彼女らも、夏のバカンスシーズンには同じような旅行をしているので、親近感を持って接してくれる。

 「この二つがあるけど、絶対にこっちを勧めるわ。 友達が働いてるの」

 「じゃあ、そのホテルで。 で、ここから予約できる?」

 「ありがとう、勿論よ」

 宿は決まった。 あとは地図と街を見比べ、バスキングが出来そうな場所をチェックしながら、ホテルへと向かう。 

 北ヨーロッパの朝は意外と遅い・・・街に人がで始めるのは11時過ぎからか。 そしてその街のバスキング事情、レギュレーションは始めてみないと分からない。 まあ、30分ほど演奏すれば分かる。 ポリスが来なければ、フリー。 もしポリスが何かを言ってきたら話を聞くーーーポリスステーションに行って申請書を書くだけ、申請書と一緒にTAXの先払い。 そして稀な可能性として、ポリスに追われる。

 ミュンヘン。 駅が大きく、まだ昼前だというのに、やたらと人が多い。 いつものように駅のインフォメーションでホテルを予約し、市街地図を貰う・・・市街地図というより観光地図だ。 超有名な観光地なのは知っていたが、観光に興味のない私はミュンヘンがどんな街か知らなかった。 もらった地図を見るかぎり、大きな旧市街と、やたらと多い観光スポット。 さすがは超有名観光地ミュンヘン。

 とにかく旧市街があると、話が早い。 そこが仕事場となる。

 ただ有名観光地は、当たり外れも大きいので、それが心配だ。 ソロのフルートは音量が小さく。見た目のインパクトも弱い。 そのため人が多すぎると、雑踏に紛れてしまう。

 超有名観光地ミュンヘンの、旧市街。 ひと、ヒト、人、余りの人の多さに驚き、只々戸惑うばかり。 予想以上だ。 しかもすでに、何人かのバスカーが立っている。 しかしどんな状況だろうが、ポーリッシュエアーに払ったエキストラ料金を取り戻さねば、気が済まない。 

 メインから少し外れた裏通り、それでも人の通りは絶えない。 手頃な場所を見つけ、フルートのケースを開ける。 開けたケースを路上に置き、その上に黄色いカップ。 しかしフリート吹き始めて十分、通りがかったポリスに路上のケースを蹴飛ばされた。 ドイツのポリスは一般的にメチャクチャ高圧的だが、トラベルバスカーの意地と存在意義にかけて、食い下がる。

 彼らの説明では、朝にポリスステーションで受付順に発行される当日のバスキング許可証を、見えるところに出しておくーーー出ていないと蹴飛ばされる。 ポリスステーションの場所と、受付開始時間を彼らに確認して、撤収。 昨日からのハードワーク、そしてコペンハーゲンはまだ遠い・・・今日は休日としよう。

 

 

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