誰も知らないレインボー・ギャザリング

 ”レインボー・ギャザリング”

 私がそのイベントを知ったのは、1984年の春先。 ガテマラ、アンティグアの小さなカフェで貰った小さなチラシだった。

 ”Rainbow Gathering in Mount Shasta July 1st to 7th” これだけが書かれた、なんとも不親切な小さなチラシ。 そしてこれが毎年アメリカのどこかで開かれるヒッピーの大集会だと、チラシをくれたアメリカ人旅行者が教えてくれた。 もっとも不親切なチラシで、物見遊山の観光客をとうざけるためとか、そんな話もある・・・そんなチラシのおかげで、レインボー・ギャザリングを目指した人達の多くがトラブったとか。

 とにかく全米ヒッピー大集会と聞いて、行かない理由が見つからない。

 六月初め、メキシコ、ティファナからカルフォルニア、サンディエゴ。 長期旅行者には意外と厳しいといわれたアメリカ再入国も、国境越え長距離バスでメキシコ人の集団に紛れてすんなり通過。 テキサス、ラレドから徒歩でメキシコに抜け、五ヶ月ぶりのアメリカとなる。 そしてガールフレンドとの待ち合わせ場所、ロサンゼルスへと向かう。

 さすがはロサンゼルス、ギリシャから半年経ったヒッピー旅行者が、なんの違和感もなく街並みに溶け込んでしまう。 ダウンタウンの街角、雑貨屋でタバコを買いセキュリティーのバイト警官に笑顔で見送られ、安宿にチャックイン。

 さて、一年間のアフリカ旅行を一緒に楽しんだ、ガールフレンド、リマ。 彼女とはそれ以来の再会。 話は当然、ニューヨークを目指して北米大陸横断となる。

 リマの希望はカナディアンロッキー、そしてカナダ東端のプリンスエドワード島へ。 私はカルフォルニア、レインボー・ギャザリングからのカナダ、ブリテッシュ・コロンビアの友人訪問。 結果、旅行プランはウエストコースト北上からのカナダ縦断。 そして冬前にはニューヨーク、仕事を探してニューヨークでの越冬となった。

 さあ、楽しい北米大陸旅行の始まりです!

 最初の目的地はマウント・シャスタ、レインボー・ギャザリング。 しかし、すでに7月1日。 全米ヒッピー大集会は始まっているということで、ロサンゼルスから長距離バスでマウント・シャスタに向かう。 長距離バスなら、何のトラブルもないだろうと車窓を楽しめばーーー隣を走る車の後部座席に大きなトラが座っていた。 そう、ここはアメリカ・・・アメリカの日常がある。

 翌朝、バスはなんのトラブルもなくマウント・シャスタの町に定刻到着。 町はいたって静な田舎町、しかし余りに静すぎる。 仮にも全米ヒッピー大集会が始まっているはずなのに、バスターミナルは閑散とし、外には人影さえない。 とりあえず、バスターミナルの案内所で聞いてみた。

 彼らが知っていたのは、マウント・シャスタの山の何処かで、何かのフェスティバルがあるらしい・・・それだけだった。 多分、結構な人数が案内所に訪ねて来たのだろう。 まあ、これがアメリカの日常なのだろうと、レインボー・ギャザリングを探しに町外れでのヒッチハイクを始める。 方角は分からないが、行き先はレインボー・ギャザリング。 

 一台の車が止まった。

 「レインボー・ギャザリングはどこ?」

 こちらが口を開く前に、聞かれた。

 その車にはテキサスからのヒッチハイカーが乗っていた。 ドライバー、ヒッチハイカーそして私達、皆んなで笑うしかなかった。 今度は三人並んで、レインボー・ギャザリングを探してのヒッチハイクとなった。

 一台の車が止まった。

 「レインボー・ギャザリングはどこ?」

 こちらが口を開く前に、聞かれた。

 ドライバーは、一人ソルテレイクから来た女の子。 今回も、皆んなで笑うしかなかった。 しかし全員の目標はレインボー・ギャザリングの発見ーーーそして今は、四人に車が一台。 一歩前進、何とかなりそうだ。 方角は分からないが、とりあえず皆んなで走り出す・・・たぶん、これもアメリカの日常なのだろう。

 ランチで寄った道沿いのカフェの話では、方角は合っているようだ。 Good job !

 何もない草原の真ん中で、突然制服のオフィサーに止められた。

 「生野菜、果物は持ってますか?」

 「えっ? ・・・乾燥植物は?」

 「大丈夫です」

 レインボー・ギャザリングはナショナルパーク内ということで、州外からの生野菜、果物の持ち込み禁止。 ここが大集会参加者の、検疫チェックポイントだとか。 We did it !

 道路脇に止まったいたオンボロビートルを見つけ、最終確認。 返って来た返事がーーーレインボーは、すぐそこよ。 Yes, we made it !

 パーキングになっていた草原には、すでに数百台の車が。 カラフルにペイントされたヒッピーバスにシンプルなスクールバス。 手作りキャビンを乗せたピックアップトラック、大きな煙突を突き出した木造ボディーのオールドトラック、アメリカのビッグセダンにヨーロッパのスモールカー。 ありとあらゆる車があるが、新車はない。 そこから歩いて一時間、やっとレインボー・ギャザリングのエントランスにたどり着いたが、マウント・シャスタの町から走った距離が、200キロ以上。

 誰も地図を持っていなかったが、何とかなるものだ・・・そう、これもアメリカの日常風景。 

 

 

 

2件のコメント

  1. 気になってガンガン読んでしまいました。
    それで・・・レインボーギャザリングの本編はないんですか!?

    1. しばらくチェックしていなかったので返信が遅れました
      どんなストーリーを投稿したのか記憶が曖昧なのですが気が向いたらということで

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