カルフォルニア、モドック・ナショナルフォーレストでのレインボー・ギャザリング。 五日間を過ごし、シアトルまでの足をして見つけた小型キャンピングカー。 ローカルハイウエー経由、ガソリン代折半で一週間の予定だったが四日目、コロンビア・リバーを超えてダウン。
車が壊れた。 まあ、レインボー・ギャザリング参加者の車だ、いつ壊れても不思議ではない。
修理には部品待ちで一週間・・・という訳で、私とガールフレンド、リマは再びヒッチハイカーとなった。 気ままなカントリーサイド、ドライブ旅行とは別れを告げることになったが、元々カナダ、ブリテッシュ・コロンビアの友人のところまでヒッチハイクで行くつもりだったので、大きな問題でもない。
何台かの車を乗り継いだ後にオヤジ二人組、チャーリーとジムに拾われた。
「途中、何か面白いことはあったかい、リマ?」
「レインボー・ギャザリングは、メッチャ面白かったわ」
「そういや今年は、カルフォルニアだったな」
彼らはマウント・シャスタでの全米ヒッピー大集会を知っていたーーーモドック近郊でさえイベントを知らず、会場を捜すのに苦労した私達だったが。 チャーリーは以前に参加したこともあったとか。 そう、彼らは紛れもないオールドフリークだった。
「ところで、今夜はどうするつもりだ?」
「テントがあるんで、適当に野宿しようかと」
「それだったら、俺がキャンプしている場所に来るといい。 クリークそばの最高のスポットだ」
もうすぐ夕暮れ、もちろん私達はチャーリーの誘いに乗った。
ロズリンというメインハイウエーから外れた小さな田舎町。 チャーリーは町に家があったが、町外れの森の中を流れるクリークにタープを張り、野宿生活をしながら時々の大工のバイト仕事、そして週末にはホテルにバーテンダーとして通っていた。
ジムは森の中、DIY建築中の完成間近のキャビンに住んでいた。 そのキャビンが仕上がれば売却し、また新しい土地を買いキャビンを建てるとか。 そして今キャビンには妹夫婦がバカンスで遊びに来ていて、妹の旦那は現代アートの作家だという。
そんな二人に拾われた私達。 もちろん翌日の朝、このキャンプサイトを出ることはなかった。 当然のように私達は、このキャンプサイトでの生活を楽しみ始めた。
ここはウエストコースト、ワシントン州の山沿いカントリーサイドーーー天気は最高。
朝は焚き火で優雅なモーニングコーヒー、朝日を浴びながらのブレックファースト。 日が高く登れば川遊びに、山遊び。 ジムの妹夫婦も加わって、カントリーサイドのバカンス遊び。 時にはロズリンの町に出かけ、一軒しかないターバンでランチにビール。 夜は夜で、焚き火で鹿肉、熊肉バーベキューパーティー。
ロズリンは平和だが、時として平和すぎる毎日が続く小さな田舎町。 噂が噂を呼び、人が人を呼び、このキャンプサイトに人が集まり出したーーー勝手に始まった、サマー・ギャザリング。
人が集まれば友達もでき、当然遊びも増える。
「セントへレンズを見に行かないか?」
「セントへレンズ?」
「数年前に、山の半分が吹っ飛んだやつだ」
早朝に出発し、途中ムースやコヨーテに会いながら見たセントヘレナは、地の果ての風景。
「トコマにリマ、馬に乗ったことはあるかい?」
「ないけど」
「従兄弟の牧場で借りられる、遊ぼうぜ」
色々と遊ぶ話が舞い込んでくる。 時には、たぶん大都会のヤキマまでショッピングに。 時には、ハーレー・クラブのパーティーに呼ばれたり。 時には、非合法品が手に入りミッドナイトパーテー。 挙げ句の果てには、ベビーシッターのバイトまで頼まれるという超大忙しのキャンプ生活となった、ロズリンの二週間。 このままロズリンに住まないかという話もあったが、しかし北米縦断旅行は始まったばかり、目的地ニューヨークはまだまだ地の果て、霞の向こう。
さあ、次の目的地は千キロ離れたカナダはブリティッシュ・コロンビア、レイクオカナゴン。 ハイウエーの入口で親指を立てるが田舎町ロズリン、車がほとんど通らない。 結局は車が捕まらず、ハイウエー傍で野宿ということに。 まあ、明日があるさ!