アフリカにも猫がいますーーーエジプトの猫は、神様です。 当然アフリカのジャングル、DRコンゴにも猫はいます、たぶん。 ということで、私がDRコンゴで見た大きな黒い猫、たぶん猫の話をします。
DRコンゴがまだザイールと呼ばれていたころ、ウガンダから陸路ベニに到着。 キンシャサへ向かう近道として、マンパサまでジャングルを横切り百数十キロを歩こうと。 まあ、ジャングル横断といっても、ミシュランマップにも記載されている歴史ある道。 当時その道はジャングルに還ろうとしていたが、それでも徒歩自転車専用生活道路として使われ、道沿いには集落、民家が点在していた。
当たり前だが途中、ホテルや食堂、コンビニはないが、地元民の話では四日で行けるという・・・まあ経験上、彼らが四日と言うならば自炊野宿をしながら一週間ぐらいだろう。 そして強く言われたのが、夜は必ず民家の庭先で寝ろ。
二人、10日分の米、サーディンの缶詰にレッドオニオン持参、そして水は井戸や川で5Lのポチタンクに、随時補給。 昼に道端の焚き火で一日分の米を炊き、散歩のような歩調。 夕方には民家の庭先を借り、野宿の用意。 その内たどり着くだろうと、ひたすらダラけたペースで歩みを進める。
歩き初めの頃はダットラぐらい走れるだろうと思えた道も、やがて細くなり徒歩自転車専用一本道に。
それでも昔、トラックが走れるように作られた道路の痕跡が、所々に。 川にはコンクリート製の橋が、今でも大型トラックが走れる状態で残っている。 しかし今では厚く重なったジャングルが、その生命力で徒歩自転車専用道路の両側を濃密に織り込んだ緑の壁で塞いでいる。 そして見上げる空は、天空に流れる一本の青い川筋。
アフリカど真ん中、さすがはザイール。 ジャングルを観光旅行には、最高の場所。 そして歩くペースが遅いのか、稀にしか出会わない民家。 そろそろ夕暮れも近づき、民家が恋しくなり始めた頃、
”わっ!”
心の中で大きく叫んだ。 とにかく驚いた・・・余りの驚きで、声が出なかった。
いきなり目の前に、10メートル先に大きな黒い猫。 体長1.5メートルの真っ黒な大きな猫が緑の壁から、一本道の真ん中に飛び出してきた。
こちらを見てる。 大きな黒い猫が、マジにこちらをガン見している。
ガン見されて、体が固まった。 お互いに、ガン見しあったまま動かない。 その間、5秒か、6秒か、一時間にも感じたその秒数。
そして大きな黒い猫は飛び出してきた側とは反対側の緑の壁に、飛び込んで行った。
横にいたリマは驚きもせず、
「ずいぶんと大きな、黒い猫だってね」
私はリマが驚いていなかったことに驚きながら、
「ああぁ・・・、確かに」
ライオンは人を襲うけど、猫は人を襲わないので、あれは大きな黒い猫です、たぶん・・・あるいは、あの猫は、大きな黒い猫の姿をしたザイールの神様だったのか。