さて、夢の話でもしようか・・・

 俺は焦った。 マジに焦った。

 目が覚めたら、アレが大変なことになっていた。 アレが信じられないほどに巨大化していた。 朝アレが大きくなっていることは、そほど珍しいことではないが・・・、しかし余りのも大き過ぎる。

 初めは俺も夢だと思ったーーーまあこれは男の永遠の夢ではあるが。 だがすぐにこれが夢ではないことに気付かされた。 ベットから起き上がろうとした俺は、巨大なアレの重さにバランスを崩しベットから転げ落ちた。 そしてアレを床に強か打ちつけた。 余りの苦痛に俺は床にうずくまった。 とにかく、そのおかげで完全に目が覚めた。

 俺は自覚した、これは決して夢ではなく現実リアルだと。

 俺がアレの形に変化したのか、アレが巨大化して俺を飲み込んだのか正確なところは分からないが、しかし紛れのない事実として俺はアレの形になっている。

 時として、アレが俺を支配することは知っている。 だからといって、アレが俺の肉体までをも乗っ取ったというのか・・・そんなバカな。 だが俺は理性のある人間、最高学府を卒業した知性溢れる人間だ。 例え肉体を奪われようが、精神までは明け渡さない。 あくまでも健全な精神と理性、そして最高学府で身につけた知性を持つ人間として俺は仕事に行く。 こんな姿になり他人の目が気にならないこともないが、何時ものように俺は会社に行く。 善良にして模範的、常識ある社会人として会社に同僚に、そして取引先には絶対に迷惑はかけられない。

 しかし、やはりご近所様の目は気になる。 なんといっても善良にして模範的、常識ある社会人としてはご近所様への気配りも忘れてはならない。 そういう意味でも、是非とも不必要な誤解だけは避けたい。 さすがにこの姿で表玄関からは出られない。 そう、俺は思案したーーー如何にご近所様に見つからずに家を出るかを。

 策はある。

 家の裏から、そして空き地の草むらを抜け・・・、大丈夫だ。

俺は窓を少し開け、家の裏側を確認した。 低い塀、その向こうには小学生の娘と住んでいる母子家庭。 その裏庭は幸いにも手入れが行き届かず、雑草が生い茂っている。 その先、駅に通じつメイン道路までは原っぱが続く。 完璧だ。 裏の窓から抜け出し、隣の裏庭を進めば問題ない。 俺は即座に窓から這い出し、低い塀を乗り越え雑草に覆われた隣の庭に転げ出た。

 「ギャ!」

 雑草の下には大きな石がーーーなんと俺は、アレの先端をその石にブチ当てた。

 悶絶

 「お母さん、大変よ。 裏庭に大きな松茸が」

 「あら、まあ! きっと神様へのお願いが通いたのね」

 「ほんとに、夢みたいな大きな松茸!」

 「そうよね、夢のようだわ。 うふっ、ほんと今晩が楽しみね」

 わっ! 俺は目を覚ましたーーー夢か。

 そうだ俺は二泊三日のアムステルダム行、マジックバスに乗っていたんだ。 空は夜から朝へと変わり始め、もうすぐパリに着くだろう。 夕方にはアムステルダムだ。 ヒッピー達の夢の街、アムステルダム。 そして俺もいつかは、アムステルダムに住むのが夢だ。

 

       芋虫に敬意を表して、”超不条理”

  

 

        

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