Roy Rock Roy Lonely Rolling

 今日は俺の誕生日、しかし誰も祝ってくれそうにもない。 まぁ、そんな人生だと思って諦めている。 どちらにしても今日もバスキングに行く。

 スクワットハウスのドアを開け、外に飛び出す。

 「グッドモーニング!」

 歩道に積み上げられたられた粗大ゴミを漁っていたジャンキーから大声で挨拶が飛んできた。

 「グッドモーニング!」

 相手が誰であろうと大声には大声で返す。

 ジャンキーはおおよそジャンキーと分かる。 大昔は俺自身がジャンキーだったこともあり、彼らの持つ独特なリズムを感じ取れる。 例えジャンキーであろうと誕生日の朝、ドアを開けた瞬間に大声で挨拶されるのは嬉しい。 跳ね橋で通行止めに遭っても、自転車のハンドルを軽く叩き通り過ぎる船の排気音と遊ぶーーーそこには風、そして空は晴れている。

 何時ものカフェで紅茶とスモークで仕事前のリラックス。 そして今日はバスキングのベストスポットも空いていた。 誰かからの誕生日プレゼントなのか、ラッキーな一日になりそうだ。

 街角にはまだ爽やかな朝の風が残り、人通りも少ない。 フルート吹き始めて三十分、朝挨拶を交わしたジャンキーが現れた。 そして曲が終わると話しかけてきた。

 「手伝ってもかまわないか?」

 「好きにしてくれ」

 彼が何をしたいのか分からなかったが、断る理由はない。

 彼はチップを受けるために路上に置かれた小さなカップを手に取り、通り過ぎる若い女性達に声を掛け始めた。

 「この静寂に、寄付を」

 この言葉には笑える、そして納得もする。 

 まだ人通りの少ない街角は喧騒前の静かさを保ち、ゆったりと流れるフルートの音色がその静けさを際立たせている。 俺は街角に残る朝の香りを運ぶ風を感じ取り、フルートのチューンをその風に乗せた。 何時もの街角は、何時もとは違う非日常へと変わる。

 二十分程で彼は重くなったカップを元の場所に戻し、そのまま消えた。 それは不思議なハプニング、誰かからの誕生日プレゼントなのだろう。

 これが俺とロイとの出会いだった。 そして一週間後にロイは俺のスクワットハウスの居候となり、ジャンキーとの奇妙な生活が二ヶ月ほど続くのだが・・・

 

 

 

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