カナディアン・ロックキー

 ブリテッシュ・コロンビアはレイク・オカナゴン、ジョンのDIYキャビンにたどり着いて一週間。 毎日二十四時間の森林浴浸けの生活でカルフォルニア、マウント・シャスタから一ヶ月以上かかったヒッチハイクの疲れも癒やされ、勢いついでにカナディアン・ロッキーを体験してみようかとの話にもなる。

 「面白いぜ」

 「面白いわよ」

 「面白そうだわ」

 「面白いだろう」

 ジョン、キャサリン、リマ、そして俺、キャビンにいた全員の意見が一致。 当然のようにカナダの大自然を実体験するにはキャンプとヒッチハイクだろうと・・・そう、キャンプ&ヒッチハイクでのカナディアン・ロッキー観光ツアーが決まった。 マウント・シャスタからレイク・オカナゴンまでの野宿とヒッチハイクではウエストコーストの大自然を大いに堪能できたので、絶対に期待を裏切らない観光ツアーになるだろう。

 プランはいたってシンプル、シンプル・ザ・ベスト。 ヒッチハイオクでバンフを目指し、レイク・ルイーズをヒッチハイクとキャンプで観光し再びレイク・オカナゴンまで戻ってくるだけの、日程未定のシンプルプラン。 まあ結果的には予想を大きく越えた時間を楽しむのだが。

 カナダの大自然体験ツアーのお供にとジョンの自家製グリーンスモークを貰い、俺とリマは再び路上で親指を突き上げる。 そして何時ものように色々とメッチャ面白い出会いがあるのがヒッチハイクの常。 

 「ハイ、フレンズ! どこから来たんだ?」

 「フロム ジャパン」

 「えっ、ジャパン?」

 「ネイティブかと思った」

 「えっ、ネイティヴ?」

 そう、バンフではネイティヴ・カナディアンのノディンにネイティブ・カナディアンと間違えられ、彼と友達に。 そしてティピーに暮らしながら季節労働者として北アメリカを移動する彼にバンフ近郊を案内してもらったりと想像以上に足が地に着く。

 バンフの小高い丘からノディンと臨むカナディアン・ロッキー。 それは空との境界線を引く幾重にも連なる山の頂きは白く輝き、その荘厳にして神々しき存在は人間界との境界をも誇示していた。 それでもバンフの市街に寄り添う川筋だけが人々の往来を認めるかのように、その水面は静かに蒼さを湛える。 いったいどれほどの人々がこの蒼き水に触れ、どれだけの人がこの地に埋もれたのか。 それを思うほどに彼らが刻んだ一歩、そして刻み続けた次の一歩への執念、あるいは先へ進むことへの執着の凄まじさに目眩する。 それでも空はあくまでも青く、あたかもそれがこの地の意思であるかのように。 そして、その意思と時間を共有してきたネイティヴの尊厳をその青さに見る。 なぜに私は、ここに立つ。 一歩先、その向こうには何がーーーその向こうが見たいから。 だから私はこの川を遡り、この地を越えることを願う。 たとえ雪に埋もれ、時間の隙間に凍りついたとしても。

 

 

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