アフリカは熱帯雨林コンゴ、ジャングルを突き進む一本道。 道路ぎわ密林のわずかな隙間にトラックが頭からゆっくりと突っ込んだ。 ドライバーが荷台に乗る俺たちに叫んでいる。
「トラックが壊れた!」
何でこんな所に止まったのかと思ったが、納得した。
トラックが壊れるのはきわめて普通の出来事なので驚きはない。 アフリカを走ればトラックでも壊れるのが道理だ・・・まあ、人間でも壊れる。 そしてドライバー、メカニック、荷物係が集まり故障箇所のチェックが始まったのもいつも通り。 だがいつもは陽気な彼らの顔が二時間経っても沈んだままだ。 どうやら今回のトラブルは深刻そうだ。
「だめだ、部品が完全にイカれてる」
「修理できそうかい?」
「部品がないと、無理だ」
ほとんどの故障を現場で直してしまう彼らがギブアップしている。 俺はトラックがジャングルで完全に座礁したことを理解した。
「で、動ける見込みは?」
「知り合いのトラックが通ったら彼らに部品を頼んで、それを待つ。 まあ、二週間ぐらいか。 それまでここで野宿だ」
一泊二日の旅路が、ジャングルでの二週間の野宿に変わったーーーこれがアフリカ、アフリカ旅行の醍醐味!
「ところで、食べるものは持ってるか? もし無いなら、俺たちのがある」
「ありがとう、三四日分は持っている」
米とサーディンの缶詰、鍋と五リットルのポリタンクはアフリカ旅行の常備品としていつも背負っている。
「まあ近くに民家もあることだし、何とかなるだろう」
「水場は近くに?」
「ああ、後で一緒に行こう」
近くに民家が、そして水場も? 俺はまったく気が付かなかったが、この道をいつも走っている彼らの日常として、ジャングルのどこに何があるのかを熟知しているのだろう。
ジャングルでトラックが壊れ、部品待ちで野宿の二週間。 トラブルといえば確かにそうだが、これがアフリカの日常にして世間の道理そして忖度なしのアフリカ観光旅行。 もし貴方が何もかもが予定通りのアフリカ観光を楽しみたいのなら、エアコンの効いた部屋でビール片手にユーチューブを眺めるのがお勧めかと。
まあ幸いにも俺とリマは彼らが部品を頼んだトラックに便乗し、野宿三日目にしてジャングルを脱出。 これもまたアフリカの日常、アフリカ観光旅行!